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アレックス・ジョンソン『世界の不思議な図書館』創元社

本の感想

 この本は、表紙に「本さえあれば、そこは図書館になる。」とあるように、いろいろな場所でいろいろな在り方である本のことを紹介した本です。

 以下、各章の題名です。

 

 1 旅先の図書

 2 動物図書

 3 小さな図書

 4 大きな図書

 5 ホームライブラリー

 6 移動する図書

 7 意外な場所の図書

 

 各章では最初に総括的な文章があって、その後で各々の事例を写真つきで紹介しています。この本を読みながら私は『R.O.D.』というアニメを好きな理由を確認していました。

 『R.O.D.』は大英図書館特殊工作部に所属する女性を主人公としたスパイ・アクション(?)です。スタイリッシュさのない『007』とでもいいましょうか。OVA版で3話、TV版で26話あります。ロケハンが神保町と国会図書館くらいだったらしく、神保町の古書街をフィーチャリングしてもいます。そんなアニメなので、本のある風景が次々に出てきます。

 例えば、最初の話数であるOVA版1巻にある主人公の持ちビル。ビル全体(エレベーターも含め)が本箱のように本にあふれ、屋上に建てたプレハブ(そこも本であふれています)で寝起きをしています。

 『世界の不思議な図書館』で言えば、「ホームライブラリー」で紹介されている事例を見ながら、そのことを思い出していました。

 あるいは、TV版で主人公の実家へ逃れるくだり。実家には父母が残したであろう本が階段下などいたるところに並べられています。あるいは、TV版で主人公となる紙姉妹探偵社の3人が寄宿することとなった作家のマンション。本の虫である3人が神保町から購入してくる本でスペースが次第に浸食されていきます。

 また、「移動する図書館」で紹介されている「ライブラリー・ケース」は『R.O.D.』の主人公が常備している本でいっぱいのキャリーバッグを連想させますし、船の水上図書館や救助船ライブラリーは、OVA版2巻に登場する原潜内の書棚を思い出させます。

 他にも主人公がひいきにしている古書店が下水道にセーフハウス的に棚をもっていたことなど『世界の不思議な図書館』は『R.O.D.』シリーズで目にした映像と度々リンクしていきます。

 そんな連想や思い出しを繰り返す中で私が再確認していたのは、本にあふれる場所、些細なところにスポット的にでも本が置かれている場所に自分は平和を感じている、ということでした。

 この本で紹介されていた事例の全てが同じ目的(識字の向上や集客など)を持って同じ思惑から為されたものではないと思います。でも、自分が仮に実際にそれに接したなら、自分に対して一番に機能するのは「平和を感じさせる」ことだと思う。

 一方で私はウィリアム・ブレイズの『書物の敵』や『古書泥棒という職業の男たち』(トラヴィス・マクデード著、原書房刊)、『万引きの文化史』(レイチェル・シュタイア著、太田出版刊)という題名を知っています。

 屋外に置かれてアクセスが容易そうな本を見ていると、風雨で傷んだり盗られたするという平和ではない事態も連想されます。実際、動物図書館の項で触れられていますが、ラクダやロバが本を運んでいく場所で盗賊に遭うという事態も書かれています。

 この本で書かれているように文字通り世に本があふれる姿が持つ平和な部分と平和ではない部分。本を読むということが人をどう変えるのか、あるいは変えないのか。はたまた、読むということ自体ではなくその量、多寡がその変化には影響しているのか。そうした考えに重ねたとき、運営や運用のデザインによってこれらをコントロールすることが可能なのか、ということを思いながら読んでいました。

 ただ、先に言ったように自分が本のある風景、場所に感じるのは平和や静けさです。本があふれるのは良いことだと前提しています。その根拠のない信念のようなものは一体どこからきているのか、読みおわって不思議な気持ちになっています。