天野こずえ『あまんちゅ!』11巻 マッグガーデン

 「その夢中を止めないでね」(「太古の森」p.167)

 このセリフを読んだとき、私はずいぶん昔に似た言葉を耳にしたような気がしました。でも、なかなか思い出せずにいました。

 この巻で主人公一行は沖縄を訪れます。美しい海でダイビングを楽しむ姿とともに、心の内を示す内省的な表現も見られます。

 「空と海の境界を進む」(「マングローブカヤック」p.101)

 カヤックを操舵する登場人物たちを見ていたせいもあるかと思いますが、天野こずえさんの『ARIA』シリーズのことを思い出していました。

 白状すると、私は『ARIA』ほど『あまんちゅ!』に引かれません。『あまんちゅ!』の以前の巻を読んでいて、その理由は死への近さだと思っていました。

 船を漕ぐことと水中に潜ることは、確率や客観的な側面では死への近さはそれほど隔たっていないのかもしれない。でも、感覚としてボンベがなければ息ができないダイビングの方が死に近い気がする。その一歩間違えれば、という感覚が不安としてつきまとうから『あまんちゅ!』を穏やかな気持ちで読めないのだと。

 でも、渚や汀という言葉が気になるのと同じように境界を感じられるから『ARIA』の方に引かれるのかもしれません。ダイビングでは水の中に入り込んでしまっていて端境があまり感じられない。縁側が気になるのも同じような理由からかもしれないとこの話数を読んでいて感じました。

 あるいは単純に『ARIA』を読んでいた頃と今とで自分が変わっただけなのかもしれません。

 この11巻の中で体の大きな登場人物が大盛りのご飯を食べているシーンがあります。そのシーンを見ても、何故か私は摂生してほしいと思ってしまう。メガ盛りを食べることがその人を死へ早く追いやってしまうという連想が働き、その人を慕っている登場人物たちが残される状況を思ってしまう。

 冒頭に引用したセリフを言われた登場人物は、自分の目で見た素晴しい光景をその通りに写真で残せないことで苦しんでいます。

 いいものなのに、読む側の問題で魅かれないという可能性を考えます。

 思い出せないで引っかかっていたのは、ある歌の一節でした。

 「あの微笑みを忘れないで」(ZARD「あの微笑みを忘れないで」)