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山本弘『MM9』創元SF文庫

 「人の幸せを守りたかったんです」(p.40)

 この本の設定では、自然災害と同様にして怪獣の来襲が発生しています。タイトルにある「MM」は「モンスター・マグニチュード」の略で、怪獣が及ぼす被害の規模を示す指標となっています。主人公側は怪獣災害に対応する気象庁のチーム。特撮の連続TVのように各話数完結(中には後の話数への伏線を潜ませながら)でお話は進行していきます。

 本書の説明には「地震、台風などと同じく自然災害の一種として」とありますが、私は読んでいて、多くの自然災害を具体的な形として象ったものが怪獣なのだという風に感じていました。

 新しい怪獣が観測されると、順に1号、2号とナンバリングされ特徴が分かると呼称が付けられるあたりは台風に似ていますし、過去に起こった怪獣災害として1923年の関東、1995年の神戸と並べられては、地震を怪獣として具象化しているように見えます。

 困難さは差し置くとして、対処すべき災害が怪獣というカタチで捉えられるのは分かりやすいと思います。現実の災害では、何をどうすれば被害を防げるのか分かりにくい。でも、怪獣来襲が原因なら、倒すか捕えるかして侵入させなければ被害は発生しない。

 「あいつは今、神戸方面に向かってる。上陸を許せば、九五年の大災害の二の舞だぞ!」(p.319)

 冒頭に引用したセリフを口にしたのは、神戸の災害がきっかけで気象庁の特異生物対策部に入った女性でした。自身の動機を青臭い熱血漢なものだして自嘲しています。でも、彼女のそういった側面がなければ、2話目の展開になりえなかったし、2話目が違っていれば、5話目の結末は壊滅的なものになっていたはず。

 人を守ろうと奮闘する姿を読んでいる内に、少しだけ前向きな気持ちになれたかもしれない本でした。