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東村アキコ『かくかくしかじか』2巻 集英社

マンガの感想

 「ごくたまに/ほんの一本自分が納得いく線が見つかる瞬間がある」(p.86)

 また『漫勉』の話ですが、藤田和日郎さんだったか、さいとうたかをさんの回だったかで下書きの線には責任がないという主旨の話がされていました。

 「真っ白なキャンパスに筆をのせた瞬間に/自分の中で小さな不安が生まれる」(p.54)

 『漫勉』を観ていて知ったのですが、漫画家の方はペン入れで修正するときにホワイト?(修正液のことでしょうか)を使って修正・訂正した過程が痕跡として原稿には残っているようです。これが「正解」の線なのか、不安の中で行きつ戻りつした逡巡が残っているようで、そうやって積み上がったものが結果として形になっていることに私は惹かれます。

 こんなことを考えながら思い出しているのがティム・インゴルドの『ラインズ』という本のことです。嘘です。思い出しているのは『ラインズ』という本自体ではなく、それを読んでいる時に自分が感じていたことです。

 「あと一年描いたら/毎日描いたら/来年どこでも通るから」(p.17)

 地道に線をたどっていく、それが結果的に目的地に着くことになる。そんな地味で忍耐の要ることを生徒に説ける人は今どき(このマンガの舞台となっている時代は現在よりも以前だけれども)いるのだろうか。東村さんに向けられた先生のセリフを先生の視点で読んでいる自分に気づいた時、自分の年齢のことを考えてしまいます。