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岩坂未佳(編著)『Beyond the Display』BNN新社

 池田亮司さんの『spectra』という作品が36頁から載っています。ロンドンの地上から空へ向けて一筋の光線が伸びています。

 その光を見て私は2つのものを連想していました。ひとつはナチスシュペーア)の光の柱。もうひとつは9/11で崩れ去ったWTCの跡地、グランドゼロから照らされていた2本の光の柱です。これらは現実にあったものですが、フィクションの世界のものとして『灰羽連盟』というアニメにあった、灰羽たちが巣立っていくときに生じる空へ昇っていく光も連想していました。

 『spectra』は最初、遠くから撮影した写真が載っています。ページを繰ると近景が現れます。遠くからは1本の光に見えたものが、実は複数の光の束であることが分かります。解説によるとサーチライトが49本使われているようです。

 突然このような光を見た時に何を思うのかを考えます。超常現象だと思うのか、あるいは淡泊にSF・アニメのようだと感じるのが本当のところかもしれません。

 この本で紹介されているインスタレーションを見ていると、TVゲームのRPGで旅することになる遺跡やダンジョン、あるいは道すがらにこういった現象や作品がありそうな気がしてきます。

 トロイカの『Cloud』のヴィジュアルは、プレイヤーの前に現出しようとしている中ボスのように見えます。オラファー・エリアソンの『Model for a timeless garden』はダンジョンの廊下にありそうな雰囲気ですし、リチャード・ウィルソンの『Turning the Place Over』は空間を切り取る能力者たちの戦いの跡のように見えます。また、チェ・ウラムの『Opertus Lunula Umbra』はFFの敵として登場しそうな意匠です。

 こうして見てくると、逆にゲームの中の登場人物のリアリティはどうなっているのだろうと考えてしまいます。現実の世界でこの本に紹介されている作品に出会ってしまったとき、何か想定しているものではないものと対峙している戸惑いのようなものを感じる予感があります。ゲームの中の展開では、そんな面食らうような展開の中で敵と戦っている。ゲームと現実は区別されるものですが、日常だと思っている中でそれとは違うものに接触したときの心の機微は類似のものではないでしょうか。

 RPGの世界で描かれている現象や意匠もこの本で紹介されている作品のように楽しんだり受容することができるという観点は自分の中にこれまでなかったもので、もうTVゲームをする元気はないけれど、観光旅行をするように物見遊山でゲームをすることもできるのだなと気づかせられました。