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加藤元浩『C.M.B.』30巻 講談社

 この巻には「ドリームキャッチャー」「宗谷君の失踪」「JOKER」「ピーター氏の遺産」が収録されています。

 突然失踪してしまった大学の友人を探す「宗谷君の失踪」。彼はなぜいなくなってしまったのか。

 「お前が納得せんだけぜよ」(「宗谷君の失踪」)

 中島みゆきさんの「永遠の嘘をついてくれ」という歌に次のような箇所があります。

 「人はみな望む答えだけを聞けるまで訊ねつづけてしまうものだから」

 言いたいことが何もなくても、正直に答えていても繰り返し問われる。本当はどうなんだと。

 「言いたいことは 特にない

  聞きたいことは 特にない

  だからわたしに何も望まないで」(大木彩乃「自由なことば」)

 「ピーター氏の遺産」は「正当防衛」で殺害した夫の遺産を探す妻のお話。遺産の在り処が分からないのは、夫が残していたメッセージに気づけないため。見ているもの、聞いているものがそのままの姿とは限らない。「宗谷君の失踪」とは対称的に本当の姿が分かるまで問いつづける必要を感じます。と同時に、夫自身が自分のことを分かってほしい問い続けて欲しいと願っていたのではないかとも思います。

 宗谷君が感じていたものには共感を覚えます。そして、彼のようにいなくなってしまえれば、とも思います。でも、嫌なものを避けて逃げたとしても、逃避先自体がその嫌なものに浸食されてしまうかもしれない。

 「自分の中の敵を倒さなきゃいけなかったんだ」(「ドリームキャッチャー」)

 自分がよいと思うものを汚されるのが嫌なら、対決すべきものとはきちんと対峙する必要がある。この巻の最初の話数の言葉が遅効性の毒のように効いてきます。