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ジョン・スウィーニー『ハリウッド・スターはなぜこの宗教にはまるのか』亜紀書房

 「『ほら、あいつキレてる、ばーか』と友だちがコメントした。

  『あれ、うちのおやじなんだ』とサムは答えた。」(p.276)

 BBCの番組である『パノラマ』のリポーターであったジョン・スウィーニーはサイエントロジーという団体を取材中に取材対象に対してキレてしまい怒鳴り散らします。その模様はYoutubeにアップされ全世界に配信されました。自分たちに批判的な番組に対して信用度を貶めるためにサイエントロジーによって行われたこととされます。

 この本を読んでいてピンとこないことが大きく言って2点ありました。

 1点目は取材者がキレている映像を流すことが自分たちを利することになると考えるその思考法。本文中、何度か言及されていますが、取材対象にキレることはご法度だそうです。スウィーニーさんは謝意を示してもいます。でも、その展開はカメラにとらえられている。キレているその瞬間だけを取り出せば、信用を損なわせるものかもしれないけれど、キレるに至る過程、何を見せられどんな風に言葉をかけられ続けた果てなのかを説明され見せられれば印象はまた変わったものになると思います。

 「わたしたちはカルトという言葉を使わないことを条件に教会のスポークスマンから取材を許可されている」(p.61)

 そして2点目はサイエントロジーがカルトと呼ばれることを極度に嫌がっているということ。カルトと呼ばせずに自分たちのことを宗教団体だと認めさせようと躍起になっている印象を受けます。単に知識不足なのかもしれないけれど、カルトという言葉がそこまで激情を引き起こす強い言葉だというイメージが無かったので、この件がピンときませんでした。それほど強い言葉だとしたら斉藤貴男さんに『カルト資本主義』という本がありますが、それも強い意味合いを含むものだったのかな、と考えます。

 「掲げるゴールは、地球全体を浄化(クリア)することです。」(p.321

 この本を読むかぎり、スウィーニーさんたち取材陣は恐怖を感じ消耗しつつも自分たちに危害が及ぶとしても最悪の状態は想定していない印象を受けます。でも、私は日本である宗教団体が起こした事件のことを連想してしまって、あの事件が起こる前は日本でもあの団体に対してまさかそこまではしないだろうという空気があったのだろうか、そもそもそんな団体があることすら多くの人は知らなかったのだろうか、と考えていました。浄化、なんて聞くとどうしても「ポアする」という言葉を連想してしまいます。

 あの団体が起こした事件に弁護士一家の殺人がありました。彼らによって殺されていたと分かる以前に、TVでその弁護士一家の「失踪」が不可思議な出来事というニュアンスで取り上げられているを見た記憶があります。まるで、乗員が忽然と姿を消したメアリー・セレスト号の話に似ているというニュアンスでした。ところが実は殺人事件だった。まさかと思うことが知らないところで進行している。そういった意味合いでの恐怖を感じます。

 「有名人がトーク番組に出演し、人気司会者から信仰している宗教(カバラサイエントロジーなど)の否定的な面について質問を受けることはない。」(p.267)

 最後に最も謎だったのは、邦題がどうしてこの題名になったのかということでした。原題はThe Church of Fearです。単純に『恐怖の教会』ではダメだったのでしょうか。ハリウッドスターがこの団体にはまっていることは書いてありますが、「なぜ」の部分は書かれていないと思います。というより商業的な理由でこの題名にしたとしても、この題名が引きつけるような関心を持つ方にとってこの本の内容は退屈だと率直に言って思います。