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モフセン・マフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』現代企画室

 著者であるモフセン・マフマルバフさんはイランの映画監督でアフガニスタンに関する『カンダハール』というドキュメンタリ映画などを撮られた方だそうです。

 「私は作家だ。だから、ただ書くだけだ。」「この文章が何かの影響を持つとは信じてはいないにもかかわらず。」(p.70)

 仏像が破壊されたというニュースは耳目を集めるのに、それ以前のアフガニスタンの窮状は世界から無視され続ける。マフマルバフさんはそれを批判し告発します。でも、そこで感じているのは自身の無力感のようです。

 文中、スターリンの「一人の死は悲劇だが、一〇〇万人の死は統計にすぎない」という言葉に何回か触れられています。そこでもマフマルバフさんは一人の死という悲劇を伝えることが自分には十分にできていないと思っています。

 「あの日、一人のアフガン人の幼い少女、私の小さな娘ハナと同じ背丈の一二歳の少女が、お腹を空かせて私の腕の中で震えていた姿を見たあの日から、私はこの飢餓の悲劇を訴えようと努力してきた。だが、できたのはただ、統計を出すことだけだった。」(p.142)

 バーミヤンの大仏と言えば、高木徹さんの『大仏破壊』が頭に浮かびますが、破壊されたのではなく(文字通りには破壊されているのですが)崩れ落ちた、しかも恥辱のためにという捉え方からは、国際社会の無関心にさらされてきたアフガニスタンの窮状に対する著者の想いが伝わってきます。