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稲泉連『復興の書店』小学館文庫

 「あのとき、本は多くの人たちに必要とされた。書店には人が詰めかけ、様々な本が売れていった。彼らの話を聞くと、その光景はまるで幻だったように感じられる。」(「文庫版加筆 それからの日々」p.248)

 2011年3月11日に発生した東日本大震災福島原発事故後の被災した書店を取材したのがこの本です。この文庫の基となる単行本は2012年8月に発行されています。

 「お店を再開したときは、やっと再開できたという気持ちがある一方で、書店なんかにお客さんは誰も来ないんじゃないか、とも思っていました。本というのは趣味の一部で、何か大変なことがあったときに生活の中で最初に切られるのは趣味の部分だから、本屋を再開しても本は売れないだろうって。でもそれは逆だったんです。」(p.26)

 「本なんて何の役に立たないじゃないか、という思いが当時は消えませんでした。同世代の友達がボランティアをしているのに、本屋の私は何にもできない。肩身が狭いような気持ちがあったんです」(p.143)

 「僕にはそれまで『本屋なんて所詮・・・』という思いが実はあったんです。いくら専門書を揃えても、やっていることは安く仕入れて高く売っているだけ。」(p.153)

 取材当時の声として、書店の意義について懐疑的な書店員たちとそれとは逆に本を求める人びとの姿が記述されていきます。大事なものは無くなって初めて分かる、ではないのですが、書店や本の大切さが再確認されるような内容です。

 でも、単行本刊行から2年が経った文庫に収録されている加筆部分には非常時が平時になっていくかのような中で書店を続けていくことの厳しさが綴られています。

 もともと必要とされているから非常時に必要性が再確認されるのか、非常時だからこそ必要とされるのか。

 色々なことを考えてしまってよく分からなくなってきます。