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ティル・レネベルク『なぜ生物時計は、あなたの生き方まで操っているのか?』インターシフト

 「『就寝の一時間前に飲んでください』というのが医師の指示だったが、それはふだんの就寝時間なのか、実際に就寝する時間だろうかと、彼女は考えた。」(p.91)

 朝三暮四という故事成語があります。朝に餌を3つ、夜に4つ与えるとしたところ不満が出たため朝に4つ夜に3つ与えると言うと喜んだ、結果は同じなのに目先の事にとらわれることを指していたはずです。でも、実際に結果は同じなのでしょうか。体のサイクルによっては朝に4つ夜に3つ食べた方が消化にいい、という場合はないのでしょうか。

 ジェニファー・アッカーマンに『からだの一日』という本があります。その中で薬を飲むタイミングと効果の最適化の話が出ていたと記憶しています。総量で見た場合同じでも、その順序やタイミングによって効果が変わることがある。

 そういう話は光合成の明反応と暗反応で反応が遅いほうが制限要因になる、という話を連想させます。明反応と暗反応をサプライチェーンのように見ると、片方の反応がどれだけ速くてもスループットは遅い方の反応分しか出てこない。

 と、いうわけで体のリズムのことが気になっていたのでこの本を読んでみました。

 この本は24の章(1日が24時間であることを意識した章立てになっているそうです。)から成っていて、そのそれぞれの最初に事例のようなお話が紹介されます。章の後半部分でその事例に対応した科学的説明がされる、という構成です。

 興味深かったのはティーンエイジャーの体のリズムを基に学校の始業時間を遅らせるよう提言している13章です。そこに書かれていたのは、科学的知見をもとに始業時間を遅らせるようすすめる著者たちと、生徒たちのイメージ、「起床が遅い」ことが含む文化・社会的印象をもとに抵抗を示す学校関係者たちの対立でした。

 朝が早いか遅いかがその人の人間性のイメージに関係していることも書かれているのですが、朝に弱いことがそのまま怠惰を意味するのではなく(「起きるのが遅い人のほうが長く眠っていると考えるのは間違いなのだ。その判断は、すべての人が同じ時間に寝ているという前提にもとづいている。」p.35)、リズムが違うだけだとしたら教育効果という面で一番いいタイミングで授業をするのはいいことのように思います。

 とはいっても社会に出て仕事に就けば、そうも言ってられないリズム(シフト)に合わせて働かなければいけない局面もありそうですが、それはまた別の話、でしょうか。

 他にも色々なことが書かれていましたが、仮に勤務時間が同じでも一日の内のどの部分でその時間働くかによって能率も疲れ方も違うことに対して生理的にそんなものだという風に考えることもできそうで、免罪符のように気持ちを軽くしてくれる本でした。