加藤元浩『Q.E.D.』49巻 講談社

 『Q.E.D.』49巻には「無関係な事件」「ラブストーリー」が収録されています。

 「無関係な事件」は就活中の大学生が遠く香港で起きた殺人事件に巻き込まれていくお話。使われているトリック自体は目新しくありませんが、このお話の白眉は大学生の気持ちがたどった軌跡でしょうか。就活中の大学生が読んだなら響くところがあるお話かもしれません。

 「ラブストーリー」は若かりし頃に頓挫した映画を完成させようというお話。ところが監督は完成前に鬼籍に入ってしまいます。シーンは全て撮影済み、後はそれを編集するだけ。ということで主人公の少年にお鉢が回ってくるのですが・・・。

 お話に出てくる映画の監督は人があの世に持っていけるものとして3つ挙げています。すなわち、「理」と「美」と「愛」。

 「学問をやってきた人間は『理』を持ってる 美術をやった人間には『美』がある」

 学問も美術も実用・実利という面で否定される場面が多々あります。でも、彼が言うように今際の際に人を慰めてくれるのでしょうか。

 実はこの件を読んだ時にロバート・マーフィーの『ボディサイレント』を連想しました。マーフィーさんは体が動かなくなる病気でした。だんだん自分の身体の中に閉じ込められていく状況などが綴られた本ですが、専門であった人類学の視点が著者自身の支えとなっていることを感じさせられる本だったという記憶があります。

 何かの役に立つのかと問われれば、自分の役に立つという答えもあり得るのかもしれない、そう考えさせられる話数でした。そういえば、「無関係な事件」の大学生が気づいたことも、これに似ているような気がします。