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都筑道夫『怪奇小説という題名の怪奇小説』集英社文庫

 「ほかのことは、頭のなかから消えていた。あるのはただ、おれは何を読んでいたのだ?という問いかけのことばだけだった。」(p.157)

 この箇所に差しかかったとき、私が思っていたのも正にこの引用と同じようなことでした。人称代名詞はことなりますけれども。

 このお話の語り手は超自然の恐怖を扱った小説を書く約束をします。ところが一向に筆が進みません。そうこうしている内に第1章では、なぜかジョン・スタインベックSnakeの翻訳が始まります。葡萄じゃなくても怒ってもいいのかもしれません。

 第2章になっても書けない状態に変化はなく、とうとう盗作・剽窃に手を染めることとなります。舞台が今ほど「グローバル化」の進んだ世の中ではないので、洋書を翻訳して(時代設定などをいじるだけで)自作として発表してもバレる可能性は低いようです。原題では、論文に使用された画像にまで追究が及んでしまう世のなかですが。

 面白かったのが、お話が進むにつれて、語り手が盗作のネタとして使っている本を読める他人が登場するのですが、語り手が把握しているはずのその本の内容・展開と彼女が理解しているそれがズレていることです。同じ本について会話しているようなのに、別の本のことを話しているよう。対象となる本は洋書ですので、語り手と彼女の語学力の差が影響を及ぼしている可能性に当然思い当たります。

 何らかの勘違いでそうなっていると思っている語り手ですが、そうではないことが発覚した際に思ったのが最初に引用した部分です。そう、彼女が語るその本が本当の筋だったのです。

「ほかのことは、頭のなかから消えていた。あるのはただ、おれは何を読んでいたのだ?という問いかけのことばだけだった。」(p.157)

 ここまで書いた説明には、この本で進行しているメインの出来事も設定も省かれていると思います。むしろ、そうしたつもりですが、そうなっていなかったら申し訳ありません。

 「推理小説は現実を映すものじゃないでしょう?現実はつじつまのあわないことだらけ、論理の通用しない世界だから、推理小説が読みたくなるんじゃない?」(p.173)

 実は、この本を読もうと思ったのは千街晶之さんの『読み出したら止まらない!国内ミステリマストリード100』という本で紹介されていたためでした。なので、私としてはミステリ・推理小説のつもりで読んでいるわけです。ところが、つじつまのあわないことだらけが起こっていく。正直に言って、よく分からない本でした。

 ちなみに、このブログは「読書感想文という題名の読書感想文」になっています。これを言いたいがためにこの本を読んだ、というのが真相だったりするのでしょうか。