伊岡瞬『教室に雨は降らない』角川文庫

 「明日の雨は、明日にならなきゃ降らないぜ。」(p.400)

 外を移動していて雨が降っているとはやく建物の中に入りたくなります。ある程度までの強い雨なら、屋内は安心できる場所です。教室も屋内です。でも、雨の日に教室にいても、普通の屋内と同じような安心感を感じることはできないような印象があります、個人的に。

 校舎には教室の他に色々な場所があります。学校にもよるかと思いますが、保健室、体育館、音楽室、美術室、図書室、視聴覚室、講堂、渡り廊下、職員室、校長室などなど。そのそれぞれの中にいることと感じられる安心度には差があるような気がします。どこにいるときが一番、ほっとできたでしょうか。

 この本は音楽専任で小学校に赴任した若き臨時教師が主人公です。生徒との関係の中で持ち上がる問題、生徒の家庭の問題、職員の問題、その「謎」が明らかになっていきます。いわゆる日常系のミステリ、かもしれない。

 「嫌いだから集中攻撃するんですか」

 「教師も人間だから」(p.138)

 音楽を教える者が謎を明らかにしていく、と聞いて菅浩江さんの『歌の翼に』のようなイメージで勝手に期待していました。でも、主人公は『歌の翼に』にように弱っちぃ感じではありませんでした。

 あまりくよくよしないし、音楽の道を中途半端にして小学校の先生をしていることを気にしているようでありながらも、カラっとしている印象です。

 最初に引用した部分には、続きがあるのですが、本文に書かれている内容とは異なる意味合いでこの言葉を受けてしまいました。

 明日の雨は明日にならないと降らない。だから、今日は必要なくとも傘を持つ。教育というのは、傘を持たせることでもあるのではないのかな、と読み終わってぼんやりしました。