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津原泰水『ルピナス探偵団の当惑』創元推理文庫

 この本を読もうと思ったのは、あるブログの記事を読んだためです。

 「高校生に智恵を借りにくる刑事たちというのはもちろん問題だが、その相談を真に受けて捜査に出向いてしまう高校生にも、かなり問題を感じる。」(p.63)

 高校生4名(女子3名、男子1名)による「探偵団」が事件を解決していく短編集でした。以下、各お話の題名です。「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」。

 一応、主人公(探偵役?)は女子1名、という体裁で「冷えたピザはいかが」は始まります。姉が刑事であり、既に何らかの事件解決に寄与した実績のため頼りにされている、という設定でしょうか。

 「普通の人間なら最後に気にかけるような部分に、なぜか最初に拘ってしまうような」(p.37)

 彼女のユニークさはこのように表現されています。この形容を読んで私が連想するのがコロンボ刑事や福家警部補です。普通の人が最後に気にかけるような些細な部分は、効率性を重視する流れの中では省かれたり等閑になったりするものです。実際、犯人のツメの甘さもそこに露呈したりする。でも、そういう性向は現実社会を生きる上ではあまり便利ではない気もする。犯罪解決の役に立つから見すごされてしまうけれど、実は本人はそのことをどう考えているのか。

 犯人が冷めたピザを食べざるを得なかった事情、食べているときのしんどさや心情を慮ることのできた「冷えたピザはいかが」が個人的に一番おもしろかったです。

 「お葬式で号泣している人が、真に死を悼んでいるとは限らない。」(p.77)

 さて、実は続編の『ルピナス探偵団の憂愁』を読みはじめているのですが、『当惑』の中で上に引用した部分がひっかかったのは単純に偶然ですが、でも、冒頭からああいった展開を見せる『憂愁』の前編である『当惑』の中にこういった一文が潜んでいることを素朴に皮肉なことだな、と思います。