関口良雄『昔日の客』夏葉社

「私は店を閉めたあとの、電灯を消した暗い土間の椅子に坐り、商売ものの古本がぎっしりとつまった棚をながめるのが好きである。」(p.30)
この本を読もうと思ったのは、『西荻窪の古本屋さん』で触れられている箇所があって気になったためです。
関口良雄さんは古本屋のご主人で、商いで出会うお客さんや本のことを綴ったエッセイとなっています。エッセイ、なんてカタカナよりも随筆という言葉の方がしっくりくるような本でした。
「若者よ、君は本を苦手だと言い、本を読まない事をはじていたね。そんなこと、少しもはじる事はないんだ。君の心は、この濁った東京に住んで、少しも汚れなかったではないか。都会には、本を読んでも精神の腐ったのが、ウヨウヨしている。」(p.67)
どのお話も渋い余韻の残る文章で、その中でも関口さんご自身に一本強い芯が通っていることを感じさせる箇所があったりして、味わいがある本でした。