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宇田智子『那覇の市場で古本屋』ボーダーインク

この本を読もうと思ったのは、表紙に映っている写真がいい雰囲気だったためです。『かもめ食堂』とか小林聡美さん主演で飯島奈美さんのご飯が出てくるドラマや映画のような印象を受ける写真です。
大手の書店で人文書を担当する宇田さんは那覇に店舗ができるのを機に異動を申し出ます。実際に異動し新店で業務をこなすこと約2年。書店を退職し古本屋を開くこととなります。
「入社してからまもなく十年。店の広さに本の量、お客さまと従業員の数が、だんだん手に余ってきた。なのに把握しているふるをして立ちまわることに疲れてしまった。仕事は楽しいのに、苦しい。」(p.51)
どうして大手の書店を辞め古書店の主となったのか、その辺にはあまり触れられていません。触れられていないと言えば、どうして沖縄・那覇なのか、その辺も曖昧です。
「あなたの店には郷愁と哀愁を感じるよ。ここからたくさんの出会いと思い出が生まれるはずだ。そこそこ繁盛して、名所になるといいね」(p.176)
古本屋さんの経営事情を知りたい向きには資するところの少ない本かもしれません。でも、この本を読んでいると、宇田さんの人となりというか、語弊があるかもしれないけれど、渋さがうかがえます。文章が全く騒々しくなく落ち着いているのです。
そして、本を読む人、本のことを知っていく人、本のことが好きな人、そういった人ってやっぱりいいな、と感じます。この人の書く文章をずっと読んでいたいな、そう思わせられる本でした。