ゲイブリエル・ウォーカー『命がけで南極に住んでみた』柏書房

「ここで死ぬには、愚かさも不注意さえも要らない。」(p.223)
題名を見て最初に思ったのは大げさなのでは、ということでした。「命がけ」と言ってもこれだけ色んなものが発達した世の中で文字通り「命がけ」なんてことはないんじゃないかと。
「南極が人びとを惹きつけるのは、ムダなものがいっさい省かれているためだ。」(p.7)
南極の写真を見ていいなと思うのは、きっとシンプルな美しさをそこに感じるからだと思います。でも、そこにはいつも欠けているものがあります。風や寒さといった体感する部分です。南極のことを素朴にいいなと思えてしまえるのは、不都合な部分を捨象していいところどりしているからかもしれない。
この本を読みながらずっと連想していたのは宇宙空間のことでした。以前、何かのお話で宇宙服のすぐ外側は真空で死の世界が広がっている、生と死は紙一重だという感覚が書かれていました。南極でも室内と吹雪いている外の関係は似ているような気がします。そう考えると南極もやっぱり「怖い」場所なのかな、とも思えてきます。
でも、雪の降る日に空気が静まるように静かな場所なんだろうな。いろんな騒音も聞こえてこないんだろうな、と思ってしまいます。実際は分からないのだけれど。
「南極は孤立しているにもかかわらず、あるいは孤立しているからこそ、科学を追究するにはもってこいの場所だ。」(p.31)