川口有美子『逝かない身体』医学書院

「私たちと同じようにして、進学も就職も結婚もなかば諦めて、親の介護に人生の何分の一かを費やしている難病患者の息子や娘はめずらしくない。」(p.90)
この本は大宅壮一ノンフィクション賞を受けたということでその存在を知っていました。筋萎縮性側索硬化症ALS)の母親を介護した娘である著者の視点でその日々が綴られた本でした。
「患者さんが何を考えているかは外からはわかりません」(p.25)
身体を動かすことが全くできず、精神だけが体の中に閉じ込められているかのようなTLS(=Totally Locked-in State)という状態のことは聞いたことがありました。その時、想像できたのは、自分がもしも閉じ込められる側に立ったら、ということでした。そして想像したのは恐怖でした。
「どこかが動きにくくなったら、治る病気ならば再び動くように努力するだろう。しかしALSでは逆に、どこにどのように『固定しておくか』のほうが問題になる。」(p.142)
瞼を開けたまま固まるのか、閉じたまま固まるのか、どちらを選ぶのか。そういう選択があることが正直に言ってショックでした。
ALS患者の体温は季節を物語る。」(p.176)
介護する側にも発見があることを知りました。
「『たったひとりにしか読み取れないのでは信憑性に欠ける』という専門職もいるかもしれない。」(p.218)
ALS患者の意図を「上手く」読み取る介護者についてこう書かれてもいます。傍(外野)から見ていれば、そんな批判も思ってしまうかもしれない。でも、自分が当事者だったとしたら、自分のことを「分かってくれる」人の存在はとても大切なものだと思います。
こういった本を読んでいて思うのは、自分の関心はどういった種類のものなのだろう、ということです。なんらかの理由で体が動かせなくなる可能性を感じながらも、ALSのように完全に動かせなくなるような可能性は低いと高を括っている面があるからこそ、それほど辛くならずにこういった本を読めてしまうのかもしれません。