読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

野崎まど『know』ハヤカワ文庫

「『最初から知っている』と『調べて知る』ことの差異はどんどん縮まっている。」(p.24)
題名通り、「知る」ということの意味が変わってしまった世界でそれでも「知る」ということはどういうことなのか、を描いたSFだったのかな。
「知りたいというのはね、本質的な欲求だよ」(p.109)
「調べて知る」ことに含まれる調べる過程にかかる時間がゼロに近づいているから「最初から知っている」こととの違いが少なくなっているのですが、その「調べる」の部分がありえないほど発達してしまえば、「調べる」というよりもむしろ「予測する」と言った方が適切な領域に達してしまえば、全てを知っていることになるのかもしれません。では、それが可能な生き物がいたとして、その個体にとっては知らない/知っているという差異がなくなり本質的な欲求もなくなることになるのでしょうか。
そんな疑問は、知らないものを知っていく過程の中を流れる時間、雑に言ってしまえば生きるということを無意味にしていくのではないか、という考えに転じてしまいます。でも、このお話を最後まで読んで、例え全知であっても生きることには意味がある、という風に考えさせられました。
全てを知っているのは生の中でのこと。知らないことは「全て」の外に依然としてある。それもまた、データが蓄積されていけば計算されてしまうものかもしれないのですが。