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坂木司『ホテルジューシー』角川書店

「私は自分の常識が間違っていない自信がある。だのになぜだろう、ときどき不安になる。もしかしたら、常識が正しくても、私の使い方が正しくないのかもしれない。」(p.95)
主人公の女性は大学生。沖縄のホテルで短期のアルバイトをすることになります。昼行燈のオーナー代理、お客さんの下着をみて談笑するルームキーパーたち、ともするとイイカゲン、ずぼらとも形容できる人たちとともに働きます。一方で主人公は几帳面というか、古風のとばぐちに立ったかのような価値観・倫理観の持ち主。対照的です。
「分相応、という言葉は今や死語なのだろうか。」(p.146)
主人公たちを見ていて私は『誠実な詐欺師』という本のことを思い出していました。合理的な考え方をする女性と四面四角さからは外れている村の人々。村の人々は彼女の事を疎ましく思いながらも、問題解決に必要なときは頼る。
「良いところを探そうともせず沖縄を最低と言う私。辞めたければいつでも辞めることができたのに、私は、この場所で文句ばかり言っている。」(p.52)
『ホテルジューシー』の主人公はオーナー代理たちのおおらかさと対立するのではなく、その良さに気づき「ホテルジューシー」へ溶け込んでいっていました。それは彼女の「古風さ」が誠実な詐欺師ほど厳格ではないからかもしれません。きちんとすることは大切だけれども、その一本やりでは自分が辛くなるだけなのかもな、と考えさせらる本でした。