大崎梢『ようこそ授賞式の夕べに』東京創元社

「今度は『書店大賞』というのができたのか。多くの書店員は他人事のように受け止めた。銘打たれている言葉が『売場で今、もっともすすめたい本』だったとしても、自分が選んだわけじゃない。誰かの『おすすめ』を粛々と並べるだけ。いつもの作業に変わりはなかった。」(p.20)
大崎梢さんには「成風堂書店事件メモ」と「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」という人気シリーズがあります。前者は書店に勤めるアルバイト女子大生を探偵役とした日常のミステリ、後者は文字通り出版社の営業が主役となっています。
この本では、実際の「本屋大賞」が元だと思われる「書店大賞」へ寄せられた脅迫から始まる犯人捜しの顛末が綴られます。その中で上に挙げた両シリーズの登場人物たちが出会うようになっています。副題は「成風堂書店事件メモ 邂逅編」。
「嫌いだね。書店大賞は反吐が出るほど嫌いだ」「どうして?」「本が、好きだからだよ」(p.177)
大崎梢さんは確か、元書店員でした。実際の本屋大賞をめぐる諸々の中で見聞きしたことがどれくらい反映されているかは分かりませんが、確かにそういう観点、展開もありえるな、と思える内容が描かれていました。
「規模が小さければ起きなかった問題が大きくなれば起きる。でも大きくなったからこそ、読者に届いた本もありますよ。後戻りできない道を、書店大賞も、その関係者も歩いているんだと思います」(p.144)
本に興味があって、新刊をチェックしたり面白そうな既刊の評判を気にかけたりしているから分からなくなっているのかもしれませんが、あまり本に興味がない人まで読者の間口を広げるという意味では、本屋大賞というイベントで本の存在を知らせるというのはとても意味のあることなのかもしれません。そして、本が売れない状況の中で何かしなければならないという想いを抱き行動に移した方々が投げかけた影響を無下に批判することもできないと思います。
「アンチ意見は、君だって見聞きしてるだろ。すでに売れている本しか選ばれない、ただの人気投票」(p.65)
書店員と呼ばれる人は多忙だと聞きます。実際の賞のラインナップが既に売れている本しか選ばれていない、と感じさせるものだとしたら、それが逆に本が好きな人が多いだろう書店員と呼ばれる人たちに本を読む時間がないことを暗示しているのかもしれません。ただ、そういった風に感じます。