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正木香子『本を読む人のための書体入門』星海社新書

この本を読もうと思ったのは、フォントに興味があったためです。
私がフォントに興味があるのは、メディアとしての働きが気になるからです。同じ内容でも違う書体で象られることで伝達されるもの、時には主張まで違ったものになってしまうかもしれない。更にメタのレベルであるフォントが選ばれなかったこと自体が伝達してしまうこともあるような気がしてフォントに興味をひかれていました。
「それでもやはり、選ばれなかった書体も確かに存在するのです。」(p.85)
そんな自分の関心に勝手に引きつけて読める部分がたくさんあって、この本は面白かったです。
「書体を『見分ける』ことと、『名前を知っている』こととは、まったく別だと私は思います。」(pp.117-8)という箇所はレイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』の一節を思い出させます。
また、「かっこいいフォントが自分のパソコンでつかえれば、なんだかえらくなった気がして、口では言えないようなことをついかいてしまったりするのも事実。」(p.128)という箇所は飲みこんだ相手の声でしか口をきけないカオナシ(『千と千尋の神隠し』の登場キャラクター)のことを連想します。
結局、この本という声を借りて自分は話しているだけのような感想ですが、自分がいいなと思えるものが本を読む中で書体を通じて発見できるように感じられて読んでいて気持ちが落ち着いていく本でした。