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猪谷千香『つながる図書館』ちくま新書

この本を読もうと思ったのは、図書館に興味があるためです。
最近の「変わってきている」図書館事情を取材して書かれている本でした。一読して感じたのは菅谷明子さんの『未来をつくる図書館』に似ているな、ということでした。『未来をつくる図書館』はニューヨーク公共図書館についての本なので内容としては違っているのですが、取材姿勢というか視点というか、そういったものに近似性を感じました。
「今、武雄市図書館への評価を拙速に下すことはできないと考えている。未来にならなければ、その本当の価値はわからないのではないだろうか。」(p.165)
読みながら思っていたのは、武雄市図書館についてどういった書き方をするのだろう、ということでした。賛否両論、いろいろな話題が流れてくる図書館ですが、図書館の新しい形として肯定的に書けばこれまでの図書館像肯定派から批判されそうだし、逆に否定的に書けば、武雄市図書館肯定派から悪い意味で現状維持だとして批判されそうだし。どっちに転んでも論争的な話題、でも取り上げないわけにはいかないくらい目立っている話題。それをどう扱っているのかとても気になっていました。
上に引用したように評価保留というのは判断を避けているだけのように見えますが、そこに至る過程に私は説得力を感じました。
武雄市図書館が従来の図書館像から逸脱するものだとしても、そもそものゴールが集客、市外からの来館者増だとしたら、目的を達することはできているわけで成功している。ただ、その目標を達成している理由が新奇性にあるとしたら、ツタヤ型図書館が普及していくとセールスポイントが減衰していく。そうなった時にゴールである集客を達せられるのか。
「今、武雄市図書館は確かに珍しいだろう。しかし、CCCは企業として当たり前の行動だが、全国の図書館に運営を広げる方針だ。もしも、あちこちに『TSUTAYA図書館』ができてしまえば、武雄市図書館の集客力は減っていくだろう。」(p.170)
あと、この本を読んでいて感じたのが内沼晋太郎さんの考え方との親和性でした。
『出版業界の未来』ははっきり言って暗いけれども、生き残る方法はたくさんあるし、『本の未来』に至ってはむしろ明るく、可能性の海が広がっているとぼくは考えています。」(『本の逆襲』p.7)
内沼さんは『本の逆襲』の中で従来の「本」という観念に捕われることなく「本」がもっている役割・機能を拡張したり演出したり活かしていければ、(カタチは変わっても)「本」は生きていくし、今よりもっと栄えていく、つまり未来は明るいとおっしゃっています。
図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。」(図書館の自由に関する宣言
国民の知る自由を保障するために提供される資料・施設は従来のハードに囚われる必要はないように思います。今までの資料が担っていた知る自由の保障をカタチを変えた資料が担えるなら、従前にこだわる必要はない、と個人的に思います。
『つながる図書館』の最終章ではリブライズや海土町の図書館が挙げられています。蔵書の物理的な位置が分散していて、それが有機的につながっている。クラウドソーシングといった言葉で連想するような意味合いでクラウド的な「図書館」。こういった方向性は内沼さんが「本」の未来が明るいというのと似たような意味合いで「図書館」の未来も明るいことを示しているような気がします。
鎌倉幸子さんの『走れ!移動図書館』を読んだときにも思ったのですが、こういった方向性が機能として結実していくには、(個人的な偏見かもしれないけれど)司書=本に詳しい人・本が好きな人、ではなくて組織やプロジェクトをマネジメントできるような人でなくてはならない、と思います。