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平田俊子『スバらしきバス』幻戯書房

この本を読もうと思ったのは、あるブログの記事を読んだためです。バスに乗る経験について綴られているエッセイ集でした。
普段バスを使うことはあまりありません。使う場合でも、何か目的地へいくための手段であって、バスを使うこと自体に焦点をあてることは殆どありません。でも、この本を読んでいるとバスに乗るということ、バスという空間の中にいること自体を「楽しむ」こともできるんじゃないか、と思えてきます。
「車内から人が消えていく。スーツを着た男があくびをしながら降りていくと、乗客はわたしだけになってしまった。」(p.10)
柴田淳さんに『隣の部屋』という歌があって、そのPVがバスの中が舞台になっています。上に引用した部分を読んでいてそのことを連想しました。
バスに最初から最後まで乗っているのは運転手さんだけで乗客は途中から乗って途中で降りていく。そのバスが運んでいく時間に最後まで参加するのは1人だけなんだなと思います。
毎日通る道でも、バスの中に流れている時間は乗ってみないと分からない。同じように他人の車の中を流れている時間もその車に乗ってみないと分からないのかもしれないけれど、なんとなくバスのそれは特異な性格を持っているように思います。
乗車してバスの時間にたゆたってみたくなる、そんな本でした。