たなかのか『すみっこの空さん』5巻 マッグガーデン

『すみっこの空さん』というマンガの5巻目を読みました。

「楽しかった寄り道も大人になったら近道ばかり捜している」(辛島美登里「つゆ草のにおい」)

「たぶん この世界の夕暮れは問題集の答え合わせみたいにできていて 夕焼け空が赤いのは 昼間は地上に被せられていた赤シートが その日過ごした一日の答え合わせで上空へと剥がされてしまうからだ」(p.113「せいかい」)
この巻で一番好きだったのは「せいかい」という話数でした。
学習参考書によくある赤文字で書かれた正解。赤いシートで透かせば見えなくなる。空さんのいとこの少女とその友人は未来が見えない自分たちの状況をそこに重ねて見ています。
私がこの話数を好きなのは、「その友人」が上に引用した部分のように考えているシーンが好きだから。多分それは何気ない日常の1コマで、傍から見ている人にとってはなんでもないもの。でも、彼女はそこで考えてしまう。一見、関係が全くないことから自分の本心に気づいてしまうことがある。自分はこんなことを考えていたのかと。
この話数が好きな理由はもう一つあって、赤いシートと赤文字の正解の比喩が通奏低音のように響いているお話なのですが、一番最後の引用によって、それが赤色でなければならなかった理由が分かる構成になっている点です。この話数は1話かけてこの引用部分に到達するためのものだった、と最後の最後で気づかせられたような、逆にこの引用部部分を説明するために話数が作られているような。そういう展開が私は好きです。
そういえば、「その友人」が最初に引用したように考えていたのも帰途の上でした。この巻の帯には次のように書かれています。
「帰り道の長さだけ、誰もがきっと哲学者になる。」