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内沼晋太郎『本の逆襲』朝日出版社

この本を読もうと思ったのは、題名をみて面白そうだなと思ったためです。
書店・出版社など本をとりまく業界について不況など暗い話を目にすることがよくあります。そんな中、この本の題名を見ると、そういった状況に異を唱えている本なのかな、と予断を持ってしまいます。
「『出版業界の未来』と『本の未来』とは、別のものだと考えるようになりました。『出版業界の未来』ははっきり言って暗いけれども、生き残る方法はたくさんあるし、『本の未来』に至ってはむしろ明るく、可能性の海が広がっているとぼくは考えています。」(p.7)
でも、この本で言われていたのは、書店や出版社の未来が(手放しに)明るいということではなくて、これまで「本」という言葉で捉えられてきたものの可能性・拡張性、それを前提としたときに考えられる未来の明るさでした。
例えば、三省堂で県別にレトルトカレーを本棚に並べていることをあげて本の定義を本棚に差せるものへと拡張することでカレーも本のようなものとして捉えられるとされています。(pp.72-6)
また、3章にはこれからの本について考える10個の観点があげられてもいます。
これまでのように「本」を紙に印刷されたものとして捉えることに縛られていては、「本」が果たしている役目・機能が見えなくなり本当はできることもできないままになる、そういったことを言っているように感じました。
「本の『何を』守りたいのか、『どこが』なくなってほしくないのか」(p.45)
そう考えると、『本の逆襲』という題名は、本への興味を失っている購買層へ本がこれから本当のすばらしさを示していくといった意味合いではなく、素晴らしさを理解していない・分かろうとしない本を作る側・売る側への逆襲、これまで自分のことをある意味ないがしろにしてきた側へ「本」自身が逆襲をする、そんなことを意味しているように感じました。
「暗いのはあなたの未来だけです。どうか本の未来まで巻き込まないでください。」(p.176)