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今野晴貴『ブラック企業』文春新書

この本を読もうと思ったのは、あるブログの記事を読んで気になっていたためです。
過酷な状況で従業員を働かせ使い捨てにする、というイメージがある「ブラック企業」について書かれた本でした。
「かつては指導だと理解されたことをパワハラだと受け止める人が増えたのではないか」(p.222)
パワハラの相談が増えたことを個人の捉え方の問題だと厚労省が分析したことが書かれています。パワハラに限らず、新型うつなども受け止め方など個人を問題の原因とする認識では解決の糸口がみつからないという話から『被害者を責めること(Blaming the victim)』を連想しました。
『被害者を責めること』はアメリカで教育や健康などに関してマイノリティや貧困層がパフォーマンスが悪いのは、制度や社会的な問題というよりも、個人の問題だったり、そういった集団のもつ「文化」が制度に反抗的だからだといったようにうまくいっていない側を責める言説を批判している本です。
ブラック企業』の前半部分で実際にブラック企業にダメにされてしまった方々の例が出てくるのですが、自分のことをダメな人間だ、自分が悪いと思わせられているのが印象的でした。本人でさえそうなのだから、そこで働いて潰されてしまった人以外がブラック企業の話を聞いても、酷さを認めたり共感したりしても、それを個人の問題として捉えても社会的な問題としては捉えづらいような気がしました。
でも、それを社会問題としてアピールする理由づけとして「ブラック企業が日本を食い潰す」という章で書かれていることは有効な気がします。労働災害を健保や国保に追いやることでコストを社会へ転嫁しているとするものなのですが、ブラック企業が自分たちにフリーライドしているという筋立ては自分たちも被害者になっているという風に感覚に訴えるもののような気がします。