星野博美『島へ免許を取りに行く』集英社インターナショナル

この本を読もうと思ったのは星野博美さんの本だったのと、比較的年齢を重ねたところでの自動車免許取得という内容が気になったためです。
「世界中に何百万人のドライバーがいるのかは知らないが、私は彼らを尊敬する。彼らはまぎれもなく、私にはできないことをできるのだ。」(p.143)
星野博美さんが40代にして運転免許をとろうとしたきっかけは人間関係・仕事でうまくいかなかったことなのですが、この本を読みながら考えていたのは、そのうまくいかなかった相手がこの本を読んだらどんな感想を持つのかな、ということでした。
「先生、点滅というのは、ついたり消えたりすることだから、『灯火の点滅って日本語はおかしくないですか?」(p.90)
学科の時間にこんな質問をたくさんしてしまう人に、前もって英語・中国語に堪能で著作をいくつも書いていると知らずに遭遇したなら、どんな風に感じるのかなと思いました。
多分、星野さんが通われた自動車学校の人たちは星野さんがそういった方だと知らなかっただろうし、だとしたら運転が全然上手くならない自動車学校の劣等生でできない部分しか見えなくてどんな風に捉えていたのだろうと思いました。
「『見えない』ことは『いない』ことではありません―運転教本」(p.189)
人間の特徴も同じかもしれない。見えないからといってなかったりできなかったりするとは限らない。
「干されてる可能性はありますね。正直言うと、干されたから五島に来たようなもんです」(pp.192-3)
でも、この本が出版されているということは、干されていても、そういった繋がりはあったということで、人によってうまくいかない相手がいる中でもそうではない相手もいるわけで、うまくいかない、できないことが目立つ一方で見えなくてもうまくいくこと、できることがないわけではないよなー、とぼんやり考えました。
「40年以上生きている人間にとって、昨日できなかったことが今日できるようになる、というのは、ほとんどありえないことだ。」(pp.60-1)
そのありえないことが起こっていると実感させたのが星野さんにとっての運転免許取得であって、実際に運転できるようになると色々と拓けるのかなと思わせられた本でした。