村上征勝『シェークスピアは誰ですか?』文春新書

この本を読もうと思ったのは、『統計学が最強の学問である』の中で触れられていて面白そうだなと思ったためです。文章の中の数量的な特徴に書き手固有の特徴があるのか、あるとしたら指標となるのはどういった特徴なのか、いろいろなエピソードがつまっていて計量文献学入門という趣の本でした。
「一見似たような文章を作成することは可能であっても、文章に関する種類の数値を似せることは難しいことがわかる。文章の模倣は簡単ではない。」(p.28)
読んでいて思ったのは、人の文章に似せようとしても分析すれば数値として似ていなくて模倣は難しいのなら、逆に自分の文章ではないようにしようとすることはどうなのだろう、ということでした。人の特徴に近づくのが難しいのか、自分の特徴から離れるのが難しいのか。
「どの文字の後に読点をつける傾向があるかという情報は『文章の指紋』の有力な候補である。」(p.42)
中学校の頃の国語の先生がある日言いました。この国語の教科書は嫁入り道具として持っていくくらいの価値がある、と。理由は句読点の打ち方が書かれているからでした。句読点の打ち方にも正しいとされる規則があって、それに従うように気をつける向きがあるとしたら、この本の中で文章の指紋として有力な候補とされているものも怪しくなったりするのかなと思いました。
「ある人間の文章において一生を通じて変わらない特徴が何であるかを知るのは簡単ではない。」(p.140)
あと、同じ人でも年齢によって書く文章の特徴はどれくらい変化するのだろうと思いました。と言うと本当の指紋のほうはどうなのでしょう。子どもの頃の指紋と大人になった後は同じなのでしょうか。
普段文章を書くときにそれによって自分が特定されると思っている人はあまりいないと思います。ここで書いている文章とどこか遠くで書いた文章を比較することで同じ人が書いているとバレてしまうとしたら、ちょっと怖いとともに揺るがない自分らしさというものもあるように思えて複雑な感じがしました。