ジェレミー・マーサー『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』河出書房新社

この本を読もうと思ったのは、シェイクスピア&カンパニー書店という言葉をよく見かけることがあって気になっていたためです。
「自分のシェイクスピア・アンド・カンパニーが昔のシルヴィア・ビーチの書店と―実際に『ユリシーズ』を出版した店と―間違えられたことをジョージは少し気にしていた。」(p.85)
と、言うわけで私が目にした「シェイクスピア&カンパニー」という言葉が指し示すものと、この本で描かれていた書店とは違ったものでした。
「この店はシェルターのようなものなの。ジョージは来た人たちをただで泊めてあげるのよ」(p.28)
カナダで犯罪記者をやっていたマーサーさんはトラブルを起こしてしまい、逃げるようにフランスにやってきます。そこで困っていたところ、シェイクスピア&カンパニーのことを知って転がり込むことに。そこでの日々が綴られた本でした。
シェイクスピア・アンド・カンパニーで過ごした日々は、僕にとってこの上なくソフトな、優しい日々だった。」(p.199)
この部分の前を読むと、題名にある「優しき」という言葉(原題でもsoftという単語が入っています。)が指し示す意味合いが、普通に感じる「優しさ」とは違っているような感じがして、むしろ、そこに書かれている内容からの連想としてのソフトという言葉だとすると、マーサーさんが過ごした日々は、囚われているというか、自分が罰せられているという意識を常にどこかに抱えたものだったんじゃないのかな、と感じてしまいます。
あまり、本や知識に対する愛情は感じられない本でした。