大島真寿美『やがて目覚めない朝が来る』ポプラ社

この本を読もうと思ったのは、題名がずっと気になっていたためです。
生まれて、生きて、死んでいく。ただそれだけが書かれている本なのに、とても豊かな感じを受けました。


「やがて死が堰き隔てむに忘失の刻あり人は生きて別るる」(稲葉京子)

こんな歌のことを思い出してしまったのは、主人公の父親のことがきっかけかもしれません。

「いつも姿の見えない人が生きているのか死んでいるのか。わからないのだ。」(p.93)

人が本当に別れるのはいつのなのだろう、とぼーっとしてしまいます。

「錯覚だったとしても、ここにいたことが、素晴らしいことだったように感じられる」(p.160)

自分が美しいと感じられるもの、いいな、と思えるもの、好きなもの。そういったものの存在をしっかりと感じられると、自分がここにいることもしっかりしてくるのかもしれません。

「薔薇の花びら。ケーキ。飛行機。犬。リボン。開いた本。小鳥。ティーカップ。帽子。りんご。音符。風見鶏。デイジー。スプーン。蜻蛉。」(p.182)

BGMは『My Favorite Things』で。