大倉祟裕『聖域』東京創元社

この本を読もうと思ったのは、大倉さんは福家警部補のシリーズが好きなのですが、この本は山岳ミステリだと聞いて興味を持ったためです。
「あなたを見ていると、また山に登りたくなってきたわ」(p.123)
Youtubeにアップされている吹奏楽の演奏を見ていると、また楽器を吹きたくなってきたりするのですが、そんな風に今はもうしなくなっていることをしたくしてくれるものや人っているような気がして、そういう時って、していた頃の自分のことも肯定されるような気もしたりして、こう山に登りたくなった登場人物の気持ちは分かる気がしました。
ミステリとしては、「真犯人」が犯行に走った動機というかツボがいまいちピンとこなかったのですが、この本を読んでいると、いろんな領域での「聖域」が大衆化されていって、で、そんな状況の中で大衆は「聖域」にたどり着いたように思っているかもしれないけれど、それは別の何かで、みんな紛い物の「聖域」で満足するようになるのが大衆化、ということなのかもしれないなあー、とぼんやりしました。一億総仁和寺の法師化、と言ってもいいのかも。