森谷明子『千年の黙』東京創元社

この本を読もうと思ったのは、田辺聖子さんの『われにやさしき人多かりき』を読んで『源氏物語』のことが気になってきて、この本が『源氏物語』に関係する小説だとどこかで聞いていたためです。
森谷さんの本は昔、『れんげ野原のまんなかで』を図書館関係の日常性のミステリという理由で読んだことがあって、そのときはピンとこなかったのですが、この『千年の黙』は面白かったです。
「そんなにかたくなに、男の人を拒みつづけたら、女は何のために生きているのです?」(p.206)
紫式部をホームズ役に、お付の女性をワトソン役にして綴られる日常性?のミステリだったのですが、前に読んだ『紫式部のメッセージ』の内容が重なってきてしまいました。
「結婚など、それほどいいものではないかもしれませんし」(p.205)
読みながら強く感じたのが、物語は誰のものなのか、ということでした。
「それでは、まるで『かかやく日の宮』を読んだ人はこの世に一人もいないようではないですか」(p.256)
今ほどコピーが容易ではなかった時代、物事が伝わっていくのは、元々ものと異なったものになっていく度合が強かったのかもしれない。でも、そういった「自然な」流れの中に誰かの意思が入り込んでいたとしたら、仕方がないことだと思っていたことが仕方がないことはないことかもしれないと気づいてしまったら、多くの人が「自然な」ことだとして済ませてしまう中で、それに抗うのはとても難しいことだと思います。
「正面切って反対を唱えなくても、自分の意思を通す道は必ずある。」(p.279)