吉野万理子『想い出あずかります』新潮社

この本を読もうと思ったのは、どなたかのブログの記事を読んで興味を持ったのですが、どこでだったか忘れてしまいました。
ある魔法使いが営んでいる?想い出の代わりにお金を貸してくれる質屋さんが中心のお話でした。
「あなたたち人間が、とっても誰かに会いたくなるのは、いつか永遠に会えなくなる日が来ることを知っているからよ」(p.37)
この本を読みながら考えていたのが土壇場でのことでした。永遠に会えなくなる、とは限らなくても、それを境に大きく変わってしまうポイントというのはきっとあって、そんなとき自分はちゃんと行動できるのだろうか、と考えてしまいます。おまけにそのポイントはその真っ只中ではそうだと気づけないものだろうに。
誰かが襲われそうになっているとき、人の噂だけで本人に確認せずに気持ちを決めつけてしまうとき。外から想像して考えているときは、どうすべきかはっきり分かっていても、実際に臨場したときにどうなってしまうのか、そんなことを考えてしまいました。
「明日からは、想い出を質に入れないで。いい想い出も。悪い想い出も。」(p.129)
想い出を質に入れられるのは、それを忘れてもいい、と思えるから。忘れずに引き受け続けるには、きっと後悔が少なくなくてはいけない。後悔を減らせるかどうかが、土壇場での自分の行動にかかっていると感じるから色々と考えてしまうのかもしれません。
「今度生まれ変わったらわたしも魔法使いになる」(p.251)
この本で意外だったのは、お話の長さです。読みはじめた頃は登場人物たちがこんなに成長するところまで書かれているとは思ってなくて、中学生だった子が大学生になってしまって、あらあらあら、という感じでした。でも、そこまで描かれていることで、魔法使いにとってのその子とその子にとっての魔法使いの関係がよく分かって、その子の最後の伝言は、作中言われていた運命の相手の見つけ方を言葉を変えて表現したものに感じられて、いい告白だったんじゃないのかな、と思います。
同じ時間を生きられる、というのはきっととても大切なこと。