相沢沙呼『午前零時のサンドリヨン』東京創元社

この本を読もうと思ったのは、あるブログの記事を読んだためです。日常性ミステリの連作短編でした。以下、各話数のタイトルです。「空回りトライアンフ」「胸中・カード・スタッブ」「あてにならないプレディクタ」「あなたのためのワイルド・カード」。
「うまく話すのが苦手なら、自分なりの方法で会話をすればいいっていうことだよ」(「空回りトライアンフ」p.62)
探偵役は人づきあいが苦手な女子高生マジシャン、ワトソン役は彼女に想いを寄せる草食系男子、ということでいいのかな。でも、彼女は探偵というにはあまりに超然さが足りない気がします。
勝手な偏見だけれど、ミステリものの探偵は、分かる人にしか分からない言葉でしゃべっても平気な気がする。でも、彼女はそこで伝わらないことに傷ついたり悩んだりしてしまう。
「あなたじゃ・・・気持ち、わからないだろうから」(「空回りトライアンフ」p.55)
言葉は不思議だな、と思います。文字通りの意味ではないことがあって、それが伝わることもあれば伝わらないこともある。上に引用した言葉は「私にも同じ経験があるから」と翻訳できるものです。同じように、言葉以外でもその人なりの方法で話されているものをうまく翻訳して受け止めることができればいいのにな、と素朴に思います。
「あなたのためのワイルド・カード」の最初に置かれているマジックのシーンがとても好きでした。私はたまに人生ってオセロゲームに似ているかもしれない、と感じることがあります。これまでで白が多くても黒が多くても、次に置くコマの色によって全てがひっくり返ってしまうかもしれない。彼女が演じたマジックは、彼との出会いで変わっていく自分が過去の自分の意味合いまで変えていく、そしてそんな自分を受け入れられるようになっていくことを暗示するように感じられました。