ヴィクター・パパネック『生きのびるためのデザイン』晶文社

この本を読もうと思ったのは、『世界を変えるデザイン』という本のことが気になっていて、題名から通じるところを感じたためです。
「デザイナーは、もはや企業の手中にある道具ではなく、ユーザーの代弁者でなければならないのである。」(p.116)
ノーマンさんの『誰のためのデザイン』を読んだときに、うまく使えないのは、自分が悪いんじゃなくて、デザインなどのせいだ、という風に溜飲が下がる感じがしたのですが、この本を読んでいても似たような感じを受けました。
「近距離を連絡するのにいちばん簡単な方法は、やはり歩くことだろう。」(p.183)
デザインと少し話は違うのですが、職場が変わると、ローカルルールというか、その職場職場で決まりがあったりして、やっていることや果たす機能は同じでも、具体的な作業が違ったりしてうまくいかないことがあります。そんなとき、標準化されていれば、とか、あのやり方ならできるんだから、自分はできないわけではなくて、この方法に慣れてないだけだ、とかいいわけしたい衝動にかられます。
更にそのローカルルールが明らかにエラーを起こしやすいものだった場合、どうしてわざわざミスが起こりやすい手順・環境で作業するようになっているんだろう、と疑問に思ってしまいます。
「多くの職業のうちには、インダストリアル・デザインよりも有害なものもあるにはあるが、その数は非常に少ない。」(p.9)
生まれか育ちか、という論争で生まれの方を重視しすぎる言説のように、デザイン決定論を背後に持っているように感じられる本でしたが、使う人が今現在直面している問題を解決できるようにデザインする、という方向性はとてもいいものに思えます。