俵万智『プーさんの鼻』文藝春秋

この本を読もうと思ったのは、俵万智さんの歌集だったためです。
「短歌は、私のなかから生まれるのではない、私と愛しい人とのあいだに生まれるのだ。」(p.152)
という言葉通り、自分が愛する男性、父親、弟、母、自分の子との間に生まれた歌が収められていました。
街ですれ違う人の子どもを見ていると、子どもの中には確かに未来が溢れているな、という印象を最近とみに受けます。
「紅葉の見ごろ予想を眺めおりそのころおまえはこの世の人か」(p.11)
桜が咲くころには、雪が降るころには、あの季節が来るころには、もうあの人はいない。そんな風に命の終わりと季節の到来を繋げて考えてしまうことに馴染みはあっても、同じものに命の始まりを期待する感覚は私のなかで縁遠いものです。子どもの存在は、そういった気持ちのベクトルを逆向きにするほど大きいのだろうか、と考えてしまいます。
「友の死を告げる電話を置きしのち静かに我は哺乳瓶洗う」(p.38)
死を思う分だけ、生が与えてくれる未来への期待が大きくなるのかな、とも思います。
今年、生まれた人たちが背負う必要のないものまで背負ってしまわないように、と唐突に思ってしまいました。