ジェフリー・ムーサス『「縁側」の思想』祥伝社

「縁側は家の外でしょうか?それとも家の内でしょうか?」(p.108)
この本を読もうと思ったのは、宮部みゆきさんの『小暮写真館』の中で縁側のことを言っているシーンがあって、縁側が気になっていたためです。ひらめのはあんまり興味がありませんが。
縁側(とそれに代表される日本文化など)を語り倒した、という感じの本ではなく、ムーサスさんの建築キャリアを絡めたエッセイ、という感じの本でした。
この本を読んでいて、私はムーサスさんの感覚が好きでした。
「日本の家屋がいかに壁が少なく、柱中心の建物であるかを実感しました。」(p.51)
これは、自分が住むことになった町屋の建具を実際に洗う中で気づかれたことのようなのですが、こんな風に一見地味な作業の中からでもその意味するところに気づく感じが好きです。
「道を知らないということは自分が生活している、あるいは働いている町や地域に対する感覚や愛着がないことのように思うのです。」(p.141)
人事異動で初めて電車通勤することになったのですが、乗り継ぎの経由駅構内の道順は知っていても、経由駅と到着駅との地理的関係を分かっていなかったり、仮に電車が動かなくなったときに、どの方角に歩けばいいかも分からなかったりして、マズイなと思っているのですが、それを知りたいと余り思わないのは、通勤に対する思い、ひいては今の仕事に対する自分自身の向き合い方が表れているように感じられて、ドキッとしたりしました。
ついでに、ムーサスさんが来日してキャリアを重ねていく様と、今の自分の新しい職場での腰の引け具合というか腹の据わってなさというか、そういうものを比べてしまって、言葉が通じる環境なのに何やってんだろう、と考えてしまってあまり楽しい読書ではありませんでした。
ただ、こんな風に仕事に向き合ってみたいな、とちょっとだけ前向きになれた本でした。