小平桂一『宇宙の果てまで』ハヤカワ文庫

この本を読もうと思ったのは、積読になっていたためです。題名を見た瞬間、ロマンチックな感じがありありではないですか。副題は「すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡」となっています。
「妙に沈んだ気分になった。」(p.303)
初代天文台長に選ばれたときの著者の気持ちです。この本全編を通して感じられる雰囲気は、題名から連想されるものとはちょっと違っていたように思います。
「研究者の方々は違うでしょう。要請を受けて派遣されるのではなくて、自分たちが行きたくて行くのでしょう」(p.352)
赴任手当についての折衝の中で著者が言われた言葉のようですが、自分がこの本の題名を見て期待していたものは、この言葉に表れている精神主義のようなものに似ている気がします。
「この大望遠鏡計画は何の役に立つのですか」(p.229)
更に、自分もこう問うてしまう側にいるようにも思います。
そういった無理解や誤解を情熱やオプティミズムで克服してプロジェクトを達成する、といったカタルシスがあったり、ある種わかりやすいお話ではなくて、ボディーブローのように効いてくる地味な苦しさの中で成し遂げられていく様が描かれていたように感じて、サイエンスへの憧れはあまりかきたてられなかったけれど、とても印象に残る本でした。