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『英国王のスピーチ』

映画の感想

英国王のスピーチ』という映画を観てきました。この映画を観ようと思ったのは、社会的地位がある人が公の場でする演説の重みのようなものが気になっていたためです。
「To be or not to be, that is the question.」
お話の筋としては、吃音を持っている王族がやがて友となる男性(医者とは言わないでおきます。)との訓練を通じて少しずつ克服していく、というものです。
「I will be good.」
北村薫さんの『玻璃の天』という小説の中で、ヴィクトリア女王の逸話に触れている箇所があります。若くして突如即位することを告げられた女王が「I will be good.」と言ったというお話です。
「なってしまえば素質があるとかないとか泣き言は言ってられませんからね。その職業を選択した時点でその道のプロになろうと努力するのは最低限の義務だと僕は思います」(中山七里『さよならドビュッシー』pp.204-5)
この映画を観ながらずっと感じていたのがgoodを強いられている、ということでした。主人公の王族には職業や道の選択はなかったのかもしれない。父が死に、兄が降りてしまえば自分が即位するしかない。当然、演説もしなければならなくなります。そこでは、苦手だとか吃音があるとかは言ってられない。ヒトラーの演説を映画で見て、あの男は演説がうまい、と感じているシーンがあります。演説が国民に与える印象が国の士気に影響するとしたら、自分の演説には多くのものがかかっていることになる。その重圧に負けずに立ち続けようとする姿からは、「I will be good.」という言葉を勝手に感じてしまいます。
治療者が最初に主人公に朗読させたのが、『ハムレット』でした。有名なセリフ「To be or not to be , that is the question.」を自分の声で主人公が聞くシーンが勝てはしないのだけれど、困難から目を背けることなく負けないように立ち続けている彼や奥さんの姿を暗示するようで、そして、本当はうまく話したいという想いを表しているようで、迫ってきます。
役者くずれの治療者が彼らのその想いをないがしろにしていない姿勢もまた良かったです。
「結果がどうあれ君には感謝している」