吉田篤弘『空ばかり見ていた』文藝春秋

この本を読もうと思ったのは、題名が気になったためです。
ホクトさんというさすらいの理髪師のお話でした、多分。
「『ここが、つむじ』 ホクトさんは、私の頭のてっぺんを人さし指でおさえ、『君のすべての中心』と、子供には難しいことを言った。」(p.7)
私のつむじを人さし指で突いてくる同僚が一人いて、なんでつむじなんだろう、と何となく疑問だったのですが、そうか、中心を攻撃されているのか、と分かったような分からないような感じを受けて、その個人的な理由もあって、のっけから引き込まれた本でした。でも、中心を突かれるって、なんとなくくすぐったい気がするとともに、相手の隠された攻撃性を感じてしまって、ちょっと怖くなっていきます。
そんな感じで読みながら気になったのが、本に関して書かれていた箇所でした。
「本さえ読めれば、あとのことはどうでもいいの」(p.43)
「司書が本を好きで何が悪いの」(p.243)
先日放映していた『デカワンコ』というドラマの中で多部未華子さん演じる刑事さんが自分でカワイイと思えないのに、その洋服を売っている店員は気に入らない、という旨のセリフを言っていました。それって他のことでも言えることで、本に携わる人には、やっぱり本のことは知っていてほしいと思います。わがままかな。
「身近すぎるあまり、本に頼るという発想をそもそも持っていなかった。」(p.240)
本で調べたり、図書館に行って調べたりするよりもネットで調べたりスマートフォンを買ってスキルを磨いたほうがいいのかな、紙に頼るのは時代遅れかな、と思うことがあるのですが、毎日本に触って、本を読んで、部屋では文字通り本に囲まれて、ネットだって本を探すために使っているのに、本に頼るという発想が自分自身なくて、とてもハっとさせられました。これまで読んできた本、これから読む本、読んだことはないけれどその存在は知っている本、いろんな本はヘルプを出したときに反応を返してくれるのかな。そんなことを考えると、あるシーンのことを連想してしまいます。
「だってレキは一度も助けてって言わなかったもの。ずっと待ってただけ。」「怖かったんだ。もし心から助けを求めて誰も返事をしてくれなかったら・・」(『灰羽連盟』Episode13)