若竹七海『海神の晩餐』講談社文庫

この本を読もうと思ったのは、積読本だったためです。
Misery loves company.
船上で起こる事件を描いた本でした。設定としては太平洋戦争前で、船に乗り合わせた人たちの法的な国籍と生まれとしてのアイデンティティが交錯しつつ、それが人のネガティブな行動を誘ったり誘わなかったり、というお話でした。
「過去を取り戻す力は人間にはありません。ですが、過去やその痛ましい犠牲を生かす力はあります。そうでしょう」(p.274)
このお話の前段階としてタイタニック号の悲劇に触れられています。そしてエピローグでは、船上で友好を交わした登場人物たちが戦争に巻き込まれていく不安のようなものが漂っています。個人としては分かり合える人間なのに、国や社会といった集団として対するとき、すべてを一緒くたに憎悪の対象としてしまうのかもしれない。逆に愛情の対象とすることもあるのだけれど。そうやって巻き込まれていく状況や不幸には次へ繋げるという方法でしか抗えないのかな、と思います。
そんな風に人を巻き込んでいくものを人の側から見たとき、それは嫌なものが連続して襲ってくるように見えるのかもしれません。
「不運は孤独ではない。いつも群れをなして襲ってくる。」(p.11)