木内昇『茗荷谷の猫』平凡社

この本を読もうと思ったのは、同僚がススメていたためです。直木賞作家を受賞前からフォローしているなんて、流石です。と、本人に絶対聞こえないところで言ってみる。
「展覧会の評判は軒並みよかった。もっとも、訪れるのは彼女の知人だけだったから、それも当然のことなのだ。」(「茗荷谷の猫」p.66)
この本を読んでいて強く感じたのが、自分の世界と外の世界との対比でした。それぞれのお話がつながりながら離れながら進行していく短編集なのですが、ある話数では、自分の中に閉じこもってはいけないと思うものの、別の話数では自分の世界で生きても、実は外の世界と繋がることはできる、分かってくれる人はいるといった風に感じたりして、その振幅に揺られながら読みました。
以下、各お話の題名です。「染井の桜」「黒焼道話」「茗荷谷の猫」「仲之町の大入道」「隠れる」「庄助さん」「ぽけっとの、深く」「てのひら」「スペインタイルの家」。
「あたしは、どこかで、しくじったんだね」(「染井の桜」p.11)
「そう。ものにはならなかったんだ」(「庄助さん」p.183)
「『彼は見事に踏み外さなかった』て褒めとったわ。」(「庄助さん」p.173)
どっちかに決めなくてもいいのかもしれないなあ、とぼんやり思いました。