佐藤亜紀『小説のストラテジー』青土社

この本を読もうと思ったのは、村上春樹さんの『1Q84』や小川洋子さんの『猫を抱いて象と泳ぐ』を読んでいるうちに、大衆小説というか、そういったものや評論などとは違った読みを要求されているように漠然と感じて、「小説」や「文学」って何なんだろう、とぼんやり思ったためです。佐藤さんのこの本はいい本だとして、いろんな所で目にしていました。

「読み手が反応するのは物語ではなく記述である」(p.31)

「芸術の問題は、最終的には、表面の問題に帰着する」(p.33)

私が『1Q84』を読みながら思っていたのは、扱われている「モノ」は、他の小説やライトノベル(と言った時に、村上春樹さんの小説を好んで読む人の中にはライトノベルを一段か何段か分からないけれど、低いものだとして軽んじる人が結構いるのでは、という個人的な偏見を多分に含んでいます。)やゲームでも扱われているのではないか、だとしたら、他の小説やライトノベルやゲームを蔑むかのような一方で村上さんの小説を喜々として受け入れるのはどうしてなのか、ということでした。

「読む、とは、作品を書き直すことでもあります。」(p.111)

でも、問題が表面や記述だとしたら、問われているのは書かれている「モノ」ではなくて、それを読むという「コト」だということかもしれなくて、何が書かれているかよりも、読むという経験自体を大事にすべきなのかな、と考えたりました。

「書き上げたなら書き手は口を噤んで退場し、読む側が作品を表返したり裏返したりしながら享楽を引き出すのを眺めていれば、それで十分です。」(p.246)

佐藤亜紀さんの小説が読みたくなる、そんな本でした。