ロジャー・ローウェンスタイン『なぜGMは転落したのか』日本経済新聞出版社

この本を読もうと思ったのは、『ルポ貧困大国アメリカⅡ』の中で触れられている箇所があって興味をもったためです。この本が出た当初は、タイトルから初めに決まっている結論に向かって書かれた本であんまり発見っぽいものがない本なんじゃないのかな、と勝手に思っていたのですが、違っていました。不遜ながら、邦題で損をしている本じゃないのかなと思います。邦題の副題である「アメリカ年金制度の罠」の方がこの本の内容をちゃんと伝えている気がします。

この本の内容は大きく分けて3つあって、そのそれぞれが年金に関係した団体とその構成員?との問題を描いたものでした。で、その3つとは、GM、ニューヨーク、サンディエゴでした。

「政治家たちは、給付を増額しつづけたいという強い誘惑にかられる。それによって長期的に大きな犠牲が出ることになっても、短期的には公職者にとって投票箱で見返りがある。」(p.115)

GMにしろ、ニューヨークにしろ、サンディエゴにしろ、年金を受け取る側にいい顔をしたい経営側や当局が、収入が減っている、つまり積み立てがうまくいかないにもかかわらず受給条件を緩くしたり、額を増やしたりして、結局首が回らなくなって破たんしていくという道筋をたどっているようで、まるで財源がはっきりしないのにいろいろとお金をくれる政府と似ているようで不気味な感じがしました。

そう感じるのは、与える側から見たら、財政的に苦しいことがよく分かるのに、逆に自分が受け取る側だったとしたら、額の切り下げや受給条件が厳しくなることは受け入れがたくて、このままいくと危険だということがうっすらとでも分かっていても、それでも短期的な得のために危険な方へ進める側につくように思えて、分かっちゃいるけどやめられない、状態になるんじゃないかと思うためです。

「一般の人びとの利害と公務員の利害が対立することになった。」(p.117)

ニューヨーク市の職員は『公僕』という言葉の定義を変えていった。彼らは『特権階級』―一般市民から気前のいい施しを受ける権利を持つ集団―となったのだ。」(p.146)