ヒポクラテス『古い医術について』岩波文庫

この本を読もうと思ったのは、ヒポクラテスに興味があったためです。医療関係では、看護師さんのナイチンゲールの誓いが戴帽式とともに印象が深かったのですが、むかし『ソフィーの世界』を読んだときにその医師版のようなものがヒポクラテスのものとしてあると知って、ヒポクラテスといえば、世界史の教科書の最初の方に出てくる人、というイメージくらいしかなかったけれど、興味が出てきて、ずっと気になっていました。

「医術には、古来すべてがそなわっている、すなわち原理も方法も発見されていて、発見はこれにしたがって行われているのであり」「将来も、能力をそなえた人がこれまでの発見の知識にもとづきこれを出発点として探求するならば、発見は行われ得るのである。」(p.60)

たしか、世界史の最初の方に出てくるときは、近代医学の祖とかなんとか言われていたと思うのですが、たしかに科学っぽい感じを受けました。

「ある医師がその患者のある病状に窮したり、またその経験不足のために模索状態に陥ったばあいに、他の医者をも呼ぶように求め、協議によって病人の真相をきわめ、救済の道を見出すための協力者を得ようとしても、それは何ら品位にかかわるものではない。」(p.186)

『パッチ・アダムス』という映画があって、主人公の医学部時代の同級生がある患者さんに適した対処ができるのが主人公だけだとして助けを求めるシーンがあります。その医師は主人公のことをあまりいいように思ってはいない役どころだったにも関わらず。人に助けを求めないことで、自分だけではなく、他の人の大きな害になってしまう局面で、それでも助けを求めず、手遅れになってしまうことがあるのはなんでだろう、と素朴に思います。やっぱり品位を損なうと感じてしまうからでしょうか。