佐藤俊樹『不平等社会日本』中公新書

この本を読もうと思ったのは、積読の中から気になったためです。

この本は格差社会論が一般に流行ったときに嚆矢であるかのように言われていたと記憶しています。SSM(社会階層と社会移動全国調査)という調査を使って、日本社会が努力すればナントカなる社会なのか努力してもしかたない社会なのかを探っている本でした。

佐藤さんの記述は淡々としたというか無機質な感じがして、調査の分析を佐藤さん自身がどういう想いで捉えているのかつかみにくい印象を受けたのですが、次のような箇所から、分析結果に対する佐藤さんの温度のようなものが感じられてハっとしました。

「平等社会の神話につかったまますべての人が自分と同じように生活していると思い込んでいれば、みんなまったく同じ条件で競争していると考えても不思議はない。けれども、それは(略)もっと幼稚な自己中心的態度である。」(p.110)

実は機会が平等ではないのに、それを平等だと思い込むことで競争による結果が自分の実力によるものだと思っている人への感情を感じる箇所でした。

「自分で決める社会というのは、自分では何が決められないかを正しく決める必要がある社会なのである。」(p.9)

「どこを市場でやりどこを市場でやらないのか、現実の日本社会をふまえて一つ一つ判断しなければならない。」(p.138)

先日読んだ財政に関する本の中で、どこまでをもうけてよくて、どこからはもうけてはだめなのかを決める必要がある、という感じの表現があって、そのことを思い出しました。

あと、「機会の平等が守られているかどうかは『後から』しかわからないのだ。」(p.168)という箇所があって、検証するためのデータを集めるのにとても苦労しているお話しも書かれていて、もしもライフログとかいって、文字通り全てが記録されていくようになったら、そういった検証ってやりやすくなるのかな、と突飛な連想をしました。