高嶋哲夫『風をつかまえて』NHK出版

この本を読もうと思ったのは、この本も夏の読書感想文コンクールの課題図書(高校の部)だったためです。あと、風力発電というか風車にもちょっとだけ興味があったためです。

「母さんが私の結婚資金にって、貯めておいてくれたものよ。私には、もう必要ない」(p.121)

この本はある町の鉄工所が町おこしの一環として受託した風車建設をめぐるあれやこれやを描いた小説なのですが、上に挙げたセリフを主人公の姉が言うに至る経緯が一番印象的でした。

その姉の描かれ方なのですが、歳は32という設定だし、弟である主人公の同級生たちが騒ぐくらいの美人だけれども、零細鉄工所で父親を支えるうちに婚期も逃しかかっているかのような雰囲気で、で、先ほどのセリフは風車に関わるある事故のあとでのものなのですが、それを思うと彼女が自分の体を見てそう思っているということが伝わってきてなんとも言えない感じがします。

この本は高校生向けの課題図書ということで、もしも高校生のときに自分が読んでいたら、どんな風に受け止めるんだろうと思いながら読んでしまうのですが、今だから主人公の姉が気になるのであって、高校生の頃だったら、そんなことは全然思わなかったろうなと思うと、陳腐な表現ですが、本はいつ読むかによって違った風に見えてくるものなんだな、と改めて思います。

「その進み具合によっては、町としても考えないこともない」(p.162)

風車建設は町おこしの一環ということで、行政の思惑も絡んでくるのですが、そこで描かれる議員さんたちの姿が、町のことを思っているような言葉を口にしながらも、どこか他人事のような、その後に及んでも自分の事業への利益誘導を腹に秘めているような感じで、なんとなく自治体の危機的状況も、企業の危機的状況も経営陣の示す対応パターンには似たようなところがあるように感じてしまって、それは連日TVで目にする「国会議員」と呼ばれる人たちの姿とダブって見える部分もあって、気がつけば、故郷の自治体は大丈夫なのかなと考えてしまっていました。

高校生だったころ、ローカルラジオの地域を考える、みたいな番組に成り行きで参加したことがあるのですが、高校生が地域のあるべき姿を要望して、地域の要人?がそれに応えるといったものだったのですが、高校生側が遊ぶ場所など都会な部分を求めているのに対して大人が考えているのが経済的な意味での活性化で、「よい地域」といったときに大人と子どもで捉え方が違うんだな、と思ったのが印象にあって、それは現実的かどうかということだと思うのですが、この本を選ぶ高校生は都市部にも地方にもいると思うのですが、そういった意味合いで捉え方の違いって出てくるのかなあ、とぼーっとしました。

岩本ナオさんの『雨無村役場産業課兼観光係』が好きな人は楽しめる本じゃないのかな、と思いました。