山下一仁『農協の大罪』宝島社新書

この本を読もうと思ったのは、『野菜が壊れる』を読んだときに、農協の影響について気になっていて、タイトルがとてもキャッチーだったためです。副題は「『農政トライアングル』が招く日本の食糧不安」となっています。

読んだ印象では、農協の存在によって割を食ったのは専業農家で、兼業農家はそうでもないような感じでした。「農政トライアングル」ということで、農協、農林族議員、農林官僚のつながりが焦点となっていて、農家と農協間での農作物の流通に関する問題のようなことを知りたかったのですが、あんまり書かれていませんでした。

印象的だったのは、農林中央金庫の資産運用益で農協の農産物販売や資材購入事業の赤字を補填することを農協システムの成功パターンと表現していた箇所です(p6)最近読んだ別の本の中でアメリカの自動車産業ビッグ3が本業よりも金融で儲けているという記述があったと記憶しているのですが、単純な印象ですが、副業が正業を覆いつくすようになるのって、やっぱりどっか変なのかなあと思いました。単純に金融危機という時勢のためにそう思うのかもしれないけれど。

農協の組合員が農協に最も求めることが営農指導であると書かれています(p199)。本屋さんに並んでいる農業関係の書籍には、週2日だけ農業やって1000万円とか、半農半Xとか、農業経営や農で起業的な系統と施肥の知識とか獣害対策とか実務的な系統があるかと思うのですが、前者からは兼業農業のことを連想しますし、後者からは専業農業のことを連想してしまいます。実際に農業をされている方がどんなことを必要としていて、農協があることで、どんな風に助かって、あるいはどんな風に阻害されているのか、そんな側面を知りたいと思いました。参考文献があげられていたのでいくつか読んでみようと思います。

最後に、この本ではグラフがいくつか出てくるのですが、元の数値の出典が書かれていなくて、でも後半部分のフローチャートや表の中には出典が書かれている気配のあるものがあったりして、それってなんでかなと思いました。新書だからでしょうか。