今枝由郎『ブータンに魅せられて』岩波新書

この本を読もうと思ったのは、おとといの『世界ふしぎ発見』を観たためです。ブータンが特集されていたのですが、映されている人たちの笑顔がいい感じで印象的でした。著者である今枝さんは国立図書館顧問としてブータンで10年間生活をされた方のようでした。

「"Gross National Happiness is more important than Gross Nationl Product"(国民総幸福は国民総生産よりも大切である)」(p161)この言葉は、テレビでも取り上げられていました。で、番組では、ミステリーハンターブータンの農家にホームステイして、そこでの人々との交流なども映されていました。なんとなく、ブータンが注目を浴びるのは、綺麗なものというか、近代化によって自分たちが失ったものが残っている理想郷のように見えるからなんじゃないのかなと思えて、外の人の願望のようなものが投影されていないのだろうか、と思ってしまいます。

「世俗離れしており、それ故に国立図書館という公的機関の事務には疎く、役人としては不適任者であった。」(p81)今枝さんの恩師であるロポン・ペマラさんについてこんな風に書かれています。でも、政府の中でとても重用されていたようで、今の私の周りの社会だったら、「使えないヤツ」とか言われて干されそうな気がするのですが、考え方というか、根本的に違うところがそういう部分に現れていたりするのかなあ、と思いました。

今枝さんは、ブータンの「豊かさ」は途上国ゆえに享受できることだという風な前提や見方を批判されています。でも、ブータンブータンであろうとしても、周りがそれを許さない、という展開は無いのだろうかと疑問に思います。4代国王のときに、インドとの不平等条約を徐々に平等なものへと変化させていったことが書かれていましたが、国家の歳入の4割が水力発電による電力の輸出が占めている旨も書かれていますが、外の変化に飲み込まれることなく、ブータンであるためには、テレビやこの本を読んで「ブータンっていいよね」と感じてしまうのとは別の汚いといっては語弊があるかもしれないのですが、したたかな部分を担う人がいるような気がして、それが国王なのかもしれないのですが、とても気になりました。